前世の話3

こんにちは タイムです

 

私はその後も少しずつ前世を思い出していきました

 

私はこうゆう場合いつも少しずつゆっくりゆっくり理解していきます

 

それでないと心と頭が混乱して追い付かないからです

 

始めにドーンと大きな事がわかり、ビックリして衝撃を受け

 

その後、心と頭が落ち着いて受け入れ態勢が出来てきたら

 

枝葉の部分が徐々にわかり、全体像を理解するという感じです

 

私は数日がかりで大体の事を、思い出しました

 

思い出したのは周りの状況と自分のその時の気持ちだけで

 

時代、場所、名前等はわかりませんでした

 

私はその時誰かと敵対していて、というか周りはほとんど敵で孤立

 

していました

 

そして、もうすでに死を覚悟するほど追い詰められていたのです

 

いつ斬りあいになってもおかしくない状態でした

 

それならそれでいい 向こうが大勢で襲ってきても

 

最後は憎い相手に一太刀でも斬りつける事が出来たら

 

後はもう死んでもいい

 

既に覚悟はできている 来るなら来てみろ!と思っていたのです

 

でも、彼らは私を襲っては来ませんでした

 

ある日、1人の侍が私の家に慌ててやって来ました

 

その人は今生では私の主人になる人です

 

その人を仮に「Iさん」呼びます

 

「I さん」は何か大変な事が起きていると言っていました

 

私が身に覚えのない罪で告発されていると

 

それは私にとって寝耳に水の出来事でした

 

その様な事はしていない!それは本人である私が一番よく

 

わかっています そして「Iさん」も信じてくれました

 

「行って調べてもらおう! 調べれば直ぐにわかることだ

 

自分も一緒に証言する そんなバカな事があるはずがない」

 

と、「Iさん」は言っていました

 

でも、私は行きませんでした これは彼らの罠だ

 

調べても無駄だという事はわかっています

 

多分もう証拠は捏造されている

 

証人達も既に口裏を合わせているだろう

 

もうどうする事もできない

 

それに、もしそんな事をしたら今度は「Iさん」が

 

ターゲットにされかねない

 

私の為に命懸けで証言しようとしてくれている「Iさん」

 

を、巻き込む事はできませんでした

 

殿の御前で言った言わない、やったやらないと

 

命惜しさに見苦しく言い逃れしようとしている

 

そう思われるのも嫌でした

 

いくら無実を主張しても私は負ける

 

大勢の証言の前では多分無力だ

 

言えば言うほど卑怯な人間と思われ兼ねない

 

私は諦めました 「切腹

 

それしか私に残された道はなかったのです

 

顔色一つ変えずに死んでやる!

 

最後の武士の意地!

 

歯ぎしりする想いで私は決断したのです

 

奴らのような卑怯な臆病者にはそんな事はできまい!

 

だが、私にはできる!

 

それが唯一私が彼らに勝つ方法だったのです

 

介錯は「Iさん」にお願いしました

 

「Iさん」は剣の達人だったのです

 

いくら覚悟があると言っても、下手くそな人間には

 

介錯をしてほしくなかったのです

 

間違って失敗等したら、いくら覚悟があると言っても

 

見苦しい死に様を晒す事になりかねません

 

後々迄笑い者になるような事は、私には耐えられなかったのです

 

「Iさん」に一刀で首を落としてもらう

 

そして私は、作法道理静かに美しく死ぬ

 

私の望みは、ただそれだけになっていました

 

私は「Iさん」の剣の腕前に対して絶大な信頼を

 

持っていました

 

「Iさん」ならきっと上手にやってくれる

 

そしてその時、

 

私を罠に嵌めた人間達が笑っていました

 

その中のリーダーらしき人間が勝ち誇ったように

 

タニタ笑っています

 

彼は、自分を策士だと自惚れていたのです

 

もし、私に対して夜襲をかけていたら

 

怪我人や死人が出て大事になっていたかもしれない

 

そんな野蛮な方法ではなく、策略を巡らし

 

部下達は無傷なまま邪魔者を消す事が出来た

 

「俺は凄い人間だ!」

 

彼は、笑いが止まらなかった事でしょう

 

でも、私の最後の瞬間は穏やかでした

 

無様で見苦しい死ではなく、

 

静かで美しく死ぬ事が出来た自分に対する満足感と

 

「Iさん」への感謝の気持ちただそれだけだったのです