桜並木の上で

こんにちは タイムです

 

今回のお話は、怖くて悲しい話です

 

それは、数年前の桜の季節の事です

 

二匹の犬達を家で飼うようになってから、私は色々な場所を犬達と

 

散歩する事が楽しみの一つになっていました

 

私の住んでいる市には、桜の美しい公園があり桜の季節はその公園に

 

よく散歩に来ていました

 

隣にはグランドもあり、その周りを一周する事もあります

 

ある晴れた昼下がり 「今日はグランドの周りを一周しよう」

 

そう思いグランドに向かって歩き始めました

 

でも、犬達に引っ張られてグランドの隣の道に入ってしまったのです

 

今まで行った事のない道でしたが桜並木がとても綺麗で

 

そのままその坂道を登ってみることにしました

 

美しい桜並木の緩やかな坂道をゆっくり犬達と登って行くと

 

道が開けて広場になっています

 

「こんな場所があったんだ」

 

そしてその奥に高い搭が建っていました

 

その塔は戦没者の方々や市に功績のあった方々の慰霊のための塔だったのです

 

「ここは犬達と来る場所ではない」

 

私はそう思い引き返す事にしました

 

誰もいないシーンと静かなその場所に畏怖を感じ私は早く

 

帰りたかったのです

 

でも、私の気持ちとは裏腹に犬達は真っ直ぐ塔の方に進んで行きました

 

二匹の犬達に引っ張られるように私は塔の真正面に来てしまったのです

 

改めて見上げるとその塔は物凄く高い

 

そして空が青い

 

その時「うう~うう~」という苦しそうな唸り声がしたのです

 

その声はびっくりするほど大きく静かなその場所に響き渡りました

 

私ははじめ余りにも大きいその声が、どこから聞こえるのか

 

わかりませんでした

 

でも、すぐにそれは塔からだとわかったのです

 

犬達は何もわからず私の足元で無邪気に遊んでいる

 

犬達もその声は聞こえていなかったのです

 

私は怖くなり一匹を小脇に抱え、もう一匹を引きずるようにして

 

その場から離れました

 

桜並木まで戻り塔が見えなくなった所でやっと少し安心して

 

小脇に抱えた犬を下ろしました

 

まだ怖くて胸がドキドキしている

 

私はグランドまで戻ってどういう事なのだろうと考えました

 

その声は戦没者の方々?方?で南方に出兵され苦しまれて

 

亡くなられた 病気?飢餓? 体を少しずつ潰されたような

 

恐ろしい苦しい唸り声

 

何かそんな感じがしたのです

 

まだその方々はその苦しさの中にいる

 

戦後70年以上は経っているのに まだ苦しみは癒えていない

 

私は恐ろしく悲しい気持ちになりました

 

でも、私には何もできない

 

私は時たま声が聞こえる事はあります

 

でも、それだけで普通の一般人です

 

私にはなんの力もないのです 知識も技術も持っていない

 

あの場所は綺麗に整備されているし、市は疎かにはしていない

 

後は、何ができるのだろう?

 

彼らは当時何処に行き、何があったのだろう?

 

私にどうして欲しかったのだろう?

 

何もわからないまま私はその場を後にしました

 

あれ以来、私は怖くてあの場所に行っていません

 

怖くて 悲しい そんな出来事でした

 

 

この記事を書いてから私は、やはりあの声が気になり彼らについて

 

調べてみようと思いました

 

塔に合祀された戦没者の方々は何処に行かれたのか?

 

まず、塔の管理事務所、遺族会、市役所で市史に詳しい方にも

 

聞いてみました。でも、当時の記録は何も残っていなかったのです

 

残念ですが、彼らの事はわからないままでした

 

ご冥福をお祈り致します

 

それしか私には言えません 何か御供養になる事ができたら

 

良かったのですが

 

ご協力下さった皆様誠にありがとうございました